パーフェクトセックス

パーフェクトセックス

洗練過ぎる指遣いと舌遣い

皺1つないブランド物のスーツ、落ち着き、近寄りがたさ。

それら全てを身に纏っていた紗羅の元恋人は、浮世離れしていて、平凡な生活を送るオレとは住む世界が違っていた。

***

偶然に声をかけたのがオレだったから?

何年も女と付き合ってないオレが哀れだったから?

一夜の過ちを正す為か?

アルコールに加え、狭いバスルームに充満する熱気で酩酊状態の頭で、滅多にお目にかかれない優良物件を捨てる理由を巡らしてみるが、見付かりそうもなくて、考える事を放棄した。

「っ…!」

すると、ジュッと音が出るくらい、陰茎の真ん中を強く吸い付かれ、堪らず壁に着けていた背中を少し丸めた。

余所見するなと咎められた気分になり、鮮明な湿りと滑りを生み出す下腹部に視線を落とした。

視線の先には、床に膝を着けてオレの足元に屈み、咥えた肉塊を軸に頭を縦横無尽に動かす紗羅の姿。

「はぁっ、…っ」

頭の動きに合わせて髪が乱れる様や、剥き出しの裸体が動く様は何とも淫らで、欲求を膨らませる。

そんな感じで視覚で扇情を煽られていると、オレの欲を口に含んだまま、彼女が急に顔を上げた。

視線が合うと、満足そうな笑みを浮かべ、紗羅は止めていた口と手の動きを再開させた。

口一杯に茎の部分を頬張り、入り切らない根元周辺は手で包む。

口内では舌を這わせると同時に唾液を絡ませ、手は上下に細かく動かして薄い皮膚を擦り上げたりと、数種類の刺激を組み合わせてオレの心身を快楽の波に乗せていく。

“そのやり方もアイツに仕込まれた?”

元彼の話はもちろん、友達や家族など、紗羅は自分や過去の自分の話をあまりしたがらない。

自分の手じゃ得られない強烈な悦びを生み出す、舌使いや指使いを茶化そうとしたが、それを思うとできず、唇を結んで言葉を噤んだ。

雑念を掻き消す快楽

「んっ…!」

急に大きくして苦しくなったのか、紗羅は咥内から赤黒い肉塊をゆっくり出した。

シャワーを浴びる前までは、アルコールが回っていたせいもあり、大人しく下を向いていたのに、今では支えがなくてもしっかり天井を向いていた。

熱や硬さを持って膨張した屹立は、溜め込んだ欲を飛散する瞬間を待ち望み、トロリと涎を滴らせて痙攣していた。

「苦しいよね、すぐ楽にするから」

すっかり欲情したオレを見て、ふわりと笑みを見せて言うと、紗羅は熱塊を頬裏の粘膜で包み込み、頭を上下に動かして出し入れを繰り返す。

色々な体液を浴びて滑りが良くなったのか、最初より彼女の手や口の動きが滑らかになっていた。

鈴口や括れた部分を中心に舌や唇で満遍なく舐め回される濡れた感触、玉を掠めながら付け根を気紛れに強く握り込まれる感触は、紗羅と繋がった時のそれを思わせた。

中や外の締まり具合、うねり、体温、湿り、今日まで味わってきた彼女の内壁の感覚が鮮明に脳内に蘇る。

「うっ、…はっ、っ」

卑猥な回想に耽っていると、皮を破って剥き出しになった鈴口に軽く舌先を突き立てられ、情けなくも呻くような声を上げて体を振るわせた。

直接神経を撫でられたような、熱く痺れる感覚に、ただ悶えるしかできないオレを見た紗羅は動きを止めず、もう片方の手を自らの局部に持っていき、その指をそのまま奥へ沈ませた。

指1本すら触れていなかった入口だったが、いきなり咥えさせられた異物を難なく飲み込んだ。

乱雑なやり方で最奥に繋がる口を拡げると、紗羅は埋め込んだ2本の指を同時に抜き差しした。

カクテルグラスやワイングラスの柄、カトラリー、酒のつまみ。

それらを扱う彼女の細く長い指先は、上品で清潔感のある振る舞いを常に見せる。

そんな所作をする指先が、霰もない場所を弄っていると思うと、彼女の中がどうなっているか想像するより、慰めの道具にされた腹立たしさよりも、ドクドクと心臓が高鳴った。

「ふっ…んっ、はっ、」

乱れた息遣いを繰り返す、紗羅の唇から零れる呼気は、酷く熱く湿っていて、オレと同じように欲情していると錯覚させるには充分だった。

様々な要素が混ざり合って煽情を煽ったせいか、体の一部を咥内に含ませたまま、理性の限界がやってきた。

「…紗羅、もうっ」

自分でも解る程の震えた声で、精の解放が近い事を知らせるも、彼女はそんなオレに追い討ちをかけるように頬を目一杯凹ませ、強く吸い付いてきた。

「…っ!」

痛い位の締め付けを受けた瞬間、首の皮1枚で繋がっていた理性が完全に切れ、堪え切れずに紗羅の咥内で欲を飛散させた。

しかし、無宣言の口内発射に罪悪感を抱く間もなく、彼女は流れ込んできた液体を、喉を何回か動かして飲み込んだ。

「ごちそうさま」

2人分の体液で濡れた肉塊を口内から解放すると、紗羅は口角に残った残渣をペロリと舐め取りながらオレの前に立ち上がり、下からオレの手首を持った。

「次はこっちに、ちょうだい?」

彼女の手が導いた秘所は、想像以上に熱く湿り、別の生き物のようにオレの指に吸い付いてきた。

完成された体

***

「ひぁぁっ…!」

ベッドで高く突き出させた尻肉の割れ目の先へ、急速に再燃した欲塊を埋め込めば、紗羅の甲高い叫びが部屋中に響き渡る。慰めのお陰か、オレを包む肉は茹だるように熱く、蕩けるように柔らかかった。

言葉で表せない気持ち悦さに甘えながら、最奥まで埋め込んだ熱を、ギリギリまで抜いては差し込むを繰り返して、彼女の反応を窺った。

「あぁんっ…悦いっ、」

すると、言葉と甘い喘ぎだけに止まらず、頭と両手で支える肢体をピクピク震わせたり、内壁をキュンキュンに締め付けたりと、内外の全てで肉同士が触れ合う悦びを表現する。

Gスポット、ポルチオなどの敏感な部分を刺激すれば気持ち悦いのは有名な話だが、それら以外の場所でも気持ち悦くなれるらしい。

しかし、そこまで到達するには、それなりの回数を重ねて開発する必要があるんだとか。

あの浮世離れした男か、それ以前に付き合っていた男か。

何にしても、他人の手垢にまみれたイヤらしく淫らな体は、紗羅の、女のそれを熟知してないオレですら満悦に近い感覚を味わわせられる。

それは、余計な神経を使わず快楽を得られて楽である反面、今更に開発する隙もなければ、オレとのセックスに何の期待も抱いてないと言われているようだった。

暗に突きつけられたそれらの現実に、ギリっと奥歯を噛み締めたオレは、細い二の腕を掴んで上肢を起こし、両手首を後ろで拘束した。

「気持悦いだろ?」

乱れた髪の隙間から覗く耳元で囁きながら、ギリギリまで抜き出した自身をまたゆっくり埋める。

「悦いっ、気持ち悦いのっ、」

「何処が悦いんだ? 聞かせろよ」

「あぁんっ、奥、奥が悦いっ、」

「へえ、奥ね…ここか?」

紗羅の言わんとしている場所を擦るが、掠める程度に止めて焦らした。それは、彼女に対する細やかな八つ当たり。

「そこっ、そこも悦いっ…」

「イきたいか? もっと気持ち悦くなりたいか?」

濡れた内壁を掠める動きは止めないまま、空いてる手を括れた腰から上に這わせ、膨らみを軽く握り潰しながらピンと硬くなったままの尖端を2つの指で弄る。

「イきたいっ、気持ち悦くっ、なりたいっ、」

上でも下でも焦らしを受ける紗羅の唇からは、面白い位に淫語が零れ落ちるが、これだけじゃまだ物足りない。

「だったら、さっきみたいに、また可愛くおねだりしろよ」

「あぁぁっ…イかせてっ、奥をガンガンに突いて…夕史の大きくて、硬いのでっ」

「…よくできました」

欲しかった言葉を聞けたオレは、子供を誉めるような口調で言ってから、紗羅の望みを叶えた。

「あぁぁんっ!」

最奥にある、彼女のお気に入りの場所を的確に刺激してやると、抑えていた本能を出し切るように部屋中に甘い声を轟かせた。

「そんなに悦いか…コレがっ、ココがっ、」

「あっ、悦いっ、悦いのっ…!」

背中を限界まで反らせたり、上半身を捩らせたりと、好きな場所を遠慮なく突き上げる度に見せる紗羅の些細な仕草1つ1つに呼応して、蜜路も不規則な収縮を見せる。

「あぁっんっ…もうっ、イクっ、イッちゃうっ、…あぁっ!」

動きの緩急は大きく、心身の興奮、そして、紗羅の快楽が最高潮が遠くない事を示していた。

「イきたいなら、最後に聞かせろよっ、」

「あぁっ、なにっ…?」

「…オレとあの元カレ、どっちが気持ち悦い?」

極上の悦楽というエサをチラつかせた、誘導尋問にも似た質問。

そんな意地悪な問いかけに、彼女は一瞬動きを止めたが、すぐに答えを出した。

「夕史っ…夕史がっ、いいっ…!」

この上ない悦びを得たいが為の答えだが、そんな気休めも今のオレには充分な優越感を与えた。

「…そうかよっ、」

何の感情も悟られないよう、素っ気ない口調で応えてから、硬度と熱を限界まで保った肉を勢いよく何度も擦り付けた。

「やぁぁぁんっ…!」

速度と強さを上げたリズムで最奥への刺激を続けて程なくしてだった、紗羅が上半身を反らして甲高い艶声を上げ、ぎゅうっとオレのを締め付けて快楽に身を投げ出したのは。

「…っ!」

食い千切られるような絡みに耐え切れず、蜜路が急激に狭くなったと同時にオレも我慢していた欲を再び吐き出した。

恋人として、男としてどれだけ冴えてても、過去の相手であるアンタじゃ、もうオレには勝てねえよ。

今度こそ欲望を出し尽くし、紗羅より一足早く冷静さを取り戻した頭でそう言い聞かせ、オレの自信を奪い取ろうとする劣等感をひたすらに掻き消した。

 
 


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