待ち焦がれた肉体

健気な妻の淫らな一面

デートの延期や中止は両手両足の指の本数以上、結婚式の延期は数回。

そんな、常に仕事の納期やトラブルの対処に追われる、多忙な馨の心に入り込み、彼の恋人から妻への昇格を果たした初音。

馨との結婚は彼女に、大きな優越感や安心感をもたらすが、それだけではなかった。

ー仕事より私を優先してよ

ー全然構ってくれないから寂しい

いつか、そんな自分勝手な感情をぶつけて、”仕事熱心な夫を支える良き妻”でいられなくなって、離婚を切り出されるかもしれないという恐怖感をも、同時にもたらした。

***

唖然とする馨の姿を捉えるなり、初音の頬を彩る桜色の天然の頬紅が、すっと消えて色を失う。

正に、血の気が引くという表現がぴったりだと、彼は心中で考えながらも驚きを抱かずにはいられなかった。

そんな彼を前に、手遅れで無駄な抗いだと解っていても、初音は青緑の艶やかな生地のネグリジェを手繰り寄せて、自ら暴いた上下半身の恥部を懸命に隠す。

結婚するなり仕事詰めで出張続きの馨は、新婚旅行はおろか彼女を抱いてすらいなかった。

それでも不満1つ溢さず、初音は彼の帰りを笑顔で迎え、愛情の籠った料理で馨のお腹を満たしてきた。

そんな、健気で純粋な姿からは想像できない、初めて目の当たりにする、欲情を剥き出しにした淫靡な姿に、彼女と同じ欲を抱かずにはいられなかった。

馨は口角を上げ、意地の悪い笑みを浮かべると、初音に言い放った。

「…続きしろよ、いつもしてるみたいに。ここで見ててやるから」

その言葉に彼女の顔がまた青ざめる。

「初音」

愛しさや熱っぽさを含んだ馨の囁き声は、中途半端に火照った彼女の体に、自分の指先で生み出す以上の悦びへの期待を抱かせた。

(…ズルいよ、そんな声で)

抗えないと心中で観念すると、洗脳されたかのように、初音の指先がゆっくりと、無二の秘処地へ伸びる。

公開マスタベーション

「はぁっ、ぁっ、」

そして、肉襞の奥の秘口に挿入した人差し指と中指を軽く前後に動かし、入り口周辺の筋肉を解していく。

その度に、硬い爪や指の腹が内壁を不意に掠め、何とも言えなくうっとりするような感覚が全身を巡り、初音を徐々に快楽の虜にしていく。

一度味わえば最後、より濃い甘さや熱さを求め、彼女は指を奥へと進めた。

「はぁっ…あぁ…んっ、」

濃厚になっていく恍惚感に、吐息混じりの喘ぎを溢し、全身を震わせて、初音は悶絶するしかできなかった。

そこに馨の熱い視線が注がれている今、彼女がそれに抵抗する術はなかった。

僅かに残っていた、恥じらいという名の理性を捨て去り、ゆっくりと悦楽の波に身を任せる。

(…エロすぎ)

目の前で繰り返される指の滑らかな律動、目を閉じて悩ましげ表情で密やかな声を漏らしながら色白の半身をくねらせる初音の姿は、挿入時の様子を想像させ、馨をもその波に道連れにしようとした。

ー挿れて初音の中でメチャクチャに暴れてやりたい

続けろと言った手前、何よりも彼女が乱れる様を見ていたくて、彼は内に沸々と湧き上がる欲を意地とプライドで抑え込んだ。

「独りでヤる時、何を材料にしてる?」

「っ…はぁっ…馨、馨のことっ、」

「へえ、オレに入れられてる想像して、いつもそうやってシてんだ…本当はヤラしい女だっただな、初音って」

「あぁっ…ゴメン、なさい、ヤラしくてっ、…んっ、」

「別に、謝る事じゃねえし。ほら、手止まってる」

(また、そんな声で…)

やはり彼の声調にひれ伏すしかできない初音は、いつの間にか止めていた3本の指を動かした。

一定のリズムで濡れた肉壁を刺激するだけでは物足りなくなっていた彼女は、動きを再開すると同時にもう片方の手も前に持ってくると、今度は上の方に隠れている秘豆に触れた。

「はぁんっ、」

血色良く紅潮したそれは、存在を主張するように膨れて、包皮をも捲っていた。

そんな敏感な状態の肉豆に与えられる、指の腹や爪先で引っ掻いたり捏ね回したりと微弱な刺激にも、初音の体は過敏に反応した。

外の秘芯への刺激が内壁や最奥にも伝わると、中は更に湿りを帯び、うねったり収縮したりと複雑な動きを繰り返して、彼女の指をキツく締め付ける。

馨の律動を想像して動く、細い指先が出入りする度、収まり切らない初音の粘液が指の付け根から零れ出し、シーツを濡らした。

(初音の中は蕩けそうな程にグズグズに濡れて熱いんだろう、狭くて強く吸い付いてくるんだろう)

悦びに悶絶する彼女を材料に、そんな淫猥な想像をすれば、少しずつ溶けていく氷のように、じわじわと薄れていく。

しかし、正常な思考の鈍化が進んでも、はっきり認識できる事が1つだけあった。

―初音の視線だった

薄く開いた瞼から覗く、瞳が映しているのは馨の下半身を覆う黒のパンツの中心部。

そこは既に、テントでも張ったように控えめに隆起していて、蓄積物の解放を今か今かと待ち侘びていた。

溶けかけのキャンディーのように、熱く潤む瞳を視界から外さないよう、初音が体重を預けるダブルベッドへと歩を進め、女性の象徴とも言える部分を全て剥き出しにした彼女の前に立ち塞がった。

そして、布を押し上げている部分に、漏れ出た粘液で濡れた初音の手を置いた。

誘導された陰処は、数枚の布を隔てているにも関わらず彼女の掌に、芯や硬さ、高過ぎる馨の体温を鮮明に伝えた。

「欲しいんだろ、オレが」

馨の肉尖が刻む心地悦いリズム、強さ、茹だるような熱と硬さを持った肉との密着感。

”初音っ”

澄ました表情が崩れ、欲情に濡れた声で名前を呼ぶ馨の姿。

無防備で扇情的な彼の姿が、走馬灯のように、彼女の脳内で次々と再生される。

(馨が欲しい…早く馨に触れたい)

脳内で止めどなく蘇る、理性を捨て去っても色気を放つ馨の姿が、初音の心身をドクドクと昂らせた。

”馨の薄っぺらい虚勢に付き合う”という、悠長な時間はもう彼女には残されていなかった。

溢れ続けた女としての欲求が、初音の中で静かな音を立てて爆発した。

妻の細やかで淫らな仕返し

寛げる時間すら惜しいとでも言うように、彼女は衣類を盛り上げている部分をパクリと口に含むと、膨らみの形に沿って舌先を這わせた。

下から上に、肉の輪郭をなぞって確めるように、馨から視線を外さないままゆっくりと舐め上げる。

ゆっくりと焦らすような舌の動きは、言葉で羞恥心を与えられた初音からの細やかな仕返しのようにも見えた。

彼女の舌から、パンツやその下のインナーに口腔液を吸水し、まるで失禁でもしたように小さなシミを作る。

時折、不意に犬歯を立てられるも、布2枚を隔てている為に痛みが緩和され、甘噛みのようにしか感じなかった。

「はぁっ、」

不鮮明な湿りや噛み付きに、馨は唇を薄く開いて乱れた息を溢しながら、眉間に力を込めて軽く顔を歪めた。

曖昧だが、確かな体温や感触を持った刺激と、痒い部分に手が届かないような、どうしようもない気持ちが、馨から意地やプライドを奪って、快楽の奴隷にしようとする。

そんな彼へ、今度は初音が追い討ちをかけるように、与える刺激を特定の部分に集中させた。

顔を出しているであろう、硬い先端部の括れや裏筋。

衣類に密着して、少し浮き上がっている馨の好きな場所を、唾液で充分に湿らせた舌や唇で丹念に愛撫していく。

「おいっ…初、音っ、」

(もうっ、限界…!)

馨のその心中の言葉を悟ったように、彼女は口に含んでいた膨張物を取り出すと、後回しにしていた衣類を寛げる動作を落ち着かない指使いで行い、布の中から取り出した。

そして、外に出た拍子に勢いよくブルンと揺れた赤黒い肉茎を、初音は口一杯に頬張った。

「っ…!」

我慢に我慢を重ね続けた馨の熱棒は、窮屈な布からの解放感と突然与えられた熱く湿った感触を受け取ると、吹き出し口寸前まで溜めていた精をあっさり飛散させた。

初音の咥内へ、生暖かく湿った粘液が勢いよく流れ出す。

舌や頬裏の粘膜にそれらが浸透すると、まるで美しい景色でも目にしたように、うっとりと彼女の表情が緩んだ。

咥内がねっとりした液体で満たされると、初音は余韻をも逃さないように、それを食道へ少しずつ流していく。

馨の迸りが止まり、液体を飲み干したところで、初音は肉塊を自身の咥内から解放した。

「はぁっ、はぁっ、」

全力ダッシュ後のような浅い呼吸を繰り返し、馨は乱れた息を整える。

しかし、出す物を出して精神の昂ぶりは幾分か鎮まったが、肉体の興奮は一度の吐精では収まらず、一瞬下を向いたが再び天井を向いた。

心身の反応が清々しい程に食い違う馨の反応を見て、初音は言った。

「次は、私をイカせて?」

生理的な涙で潤んだ上目遣いの妖艶な視線、四足歩行のお座りのような被支配的な体勢。

そして、肌蹴た就寝着から覗く、滑らかな膨らみとその先端にある、木苺のように色付いた乳頭。

最愛の女性のそんな艶姿を前にした馨は、お腹を空かせた猛獣のように、初音の肢体に勢いよく飛び付いた。

湿った吐息や唇が肌を這う度、長い留守番の間に彼女の心をずっと支配していた鬱屈感がすっと薄れていく。

(…すごい、絶妙なタイミング)

初音がどうしようもない不安や恐怖に襲われた瞬間に、姿を現して彼女を求める馨。

(馨は、ちゃんと私の事を愛してくれている、今もこの先も)

気休めかもしれない、そんな安心感を得た初音は馨に心身を任せた。

久方ぶりの、甘美で濃厚な一夜の始まりだった。