長い待ち合わせの末に

長い待ち合わせの末に

抑えられない昂ぶり

「今すぐ春緋が欲しい」

人目も気にせず、息を切らす彼女の華奢な体に抱き着き、耳元で囁いた。

2時間待たされたオレの心身は、死期でも悟ったように昂っていた。

***

30も近いから身を固めろって、紹介されたのが母親の友人の娘さんの春緋だった。

結婚の関心が薄いせいか、大して彼女に興味を持てず、惰性的に付き合ってきた。

今日も本当はこんな長く待つ筈でなかった。

ー長くは待ってくれないでしょ?

だが、時間が近付いて、デートを取り止めると言った春緋に、全ての気持ちを見透かされたようで無性に腹が立ち、待ち続けて今に至る。

自分の部屋の玄関に入るなり、靴も脱がずに春緋の小さな体を壁に押し付け、覆いかぶさる。

そして、吸い寄せられるように、ブラウスの襟から伸びる首筋に唇や舌先で撫でるように触れた。

「はっ、…んっ、」

鼻先を掠める度に漂う、香水とは違う甘い香り、唇や舌先に伝わる充分な潤いや弾力、オレの動きに同調して首筋を突き出したり、乱れた呼気を吐く春緋の反応。

肌の感触や嗅覚を擽る香りに加え、彼女の仕草1つ1つが、不覚にもオレの心身を掻き乱して欲を煽った。

僅かな時間や手間が惜しくて、リボンも釦もそのままにブラウスを捲り上げる。

橙色の光の下で晒されたのは、白レースのブラ、それに覆われたバター色の膨らみ。

春緋と付き合い始めて約2年。

男女である以上は当然、肉体の交わりはあった。

シャワー浴びて、寝床で横になって、昂らせ合って挿入して、避妊具で射精して、はい終了。

お約束の段取りを踏んだ、儀式的な行為を重ねて、彼女の体は飽きる位に見てきた。

それなのに、

(…何か、すごいヤラしい)

見飽きた彼女の体が今は妙な色気を持ち、オレを誘ってるように見えた。

誘いかける肌

待てから解放された今、そんな誘惑を振り払える訳もなく、ふっくらした2つの肉の球体を掌でわし掴んだ。

空腹の肉食獣の如く、荒い手遣いで円を描きながら、滑らかな球体をぐにゃぐにゃと歪ませる。

余裕のない気持ちに対して指先は、自分にない柔らかな肌の感触、布越しでも解る乳首の硬さを鋭敏に感じ取った。

局部の窮屈さも見過ごせなくなる。

自分だけこんなに求めているのが癪で、その気持ちを投げ付けるように、白レースの布も押し上げた。その衝撃で肉の球がふるんと揺れると、予想通り硬さと芯を持った小さな突起物が現れた。

可愛らしく屹立するそれらを、2つ同時に指先でクリクリと上下左右に捏ねる。

「いぁぁっ…ダメぇ…!」

甲高い悲鳴とそんな言葉を漏らすと、与えられる感覚から逃れるように、春緋はブラウスを寄せて胸元を覆い、その場に座り込んだ。

「…ゴメン、」

怖がらせたかとか、痛かったのかと思って反射的に謝罪しながら、オレもその場にしゃがみ込んだが、彼女の様子を伺った瞬間に申し訳なさや心配はすぐに消えた。

見える頬は、確かに仄かな赤みを帯びていた。

春その反応が新鮮で、口角が自然と弧を描くのが自覚できた。

「こっちはどうなってんの?」

「ダメッ…!」

M字に開いている脚の隙間に手を伸ばすと、片方の手で手首を弱く掴まれ動きを阻まれた。

「…シャワー、シャワー浴びてからに、して」

か細い声で訴える春緋の言葉を聞き、気が付いた。

…そうか、だからこんなに触られるのを嫌がったのか。

「シャワーねえ…」

しかし今更、シャワーとか段取りなんてどうでも良かった。

「そんなん行かせる訳ないじゃん」

寧ろ、汗臭さや体臭を気にして羞恥を感じる彼女に、気分が高揚した。

ないに等しい抵抗を他所に、更に手を伸ばし、ストッキングとパンティの壁を超えて春緋の中心部に侵入した。

「やっ、やだっ、」

泣きそうな声の拒絶を聞きながら指先を彷徨わせる。

「いっ、」

すると、硬めの毛並みや厚い肉唇を経て小さな窪みに触れ、彼女の体がビクッと縮こまったと同時に、短く引き攣った声が漏れ出た。

準備を施されていないそこは、乾燥していて何の反応もなかった。

(だったら…)

忍ばせていた手を出し、スカート以外の布をずり下ろした。

履いているのが短いフレアスカートで良かったと、下劣な事を考えながら行儀の悪い脚を片方だけ肩に担ぎ、大事な部分を剥き出した。

ー今からこの先の奥深くで繋がるのか

明日はお互い休日で時間も有り余っている。

なのに、焦燥感にも似た気持ちが体を動かした。

担いだ脚はそのままに、不揃いな毛並みで作られた繁みに顔を近付け、結合部へ舌を伸ばした。

「ダメだよっ、由岐弥っ…っ、」

オレの顔を引き剥がそうとするが、その力は弱々しかった。

そんな、申し訳程度の抵抗を受けながら、薄い皮膚を覆う毛先が鼻回りを掠める位に顔を埋め、更に奥へ舌を伸ばす。

舌先で感じる奥の皮膚は、僅かながらに湿り気と生暖かさを持っていた。

軽く尖らせた先端部や、中央部を這わせて、突いたりゆっくり舐め上げたりと、届く範囲の至る部分へ舌全体で違った刺激を与える。

「んっ…っ、はぁっ、」

どれくらいか舐め回していると、建て前の拒絶は熱い吐息混じりの喘ぎに変わり、肩に乗せた脚も不規則に震える。

淫らになっていく春緋を五感で捉えながら、舌先が内壁の特定部と鼻先が小さな突起物を掠めた時だ。

「ひぁぁぁんっ…!」

肩が少し重くなると、色を含んだままの甲高い叫びが大きく響いた。

制御が効かないと、本能剥き出しの反応を目の当たりにし、オレの欲求も疼く。

当てたままの舌を離さず、今度は指先で突起に触れた。

内側は先で小さく舐め上げ、外は撫でたり弱く弾き、胸の先端を触る感覚で弄ぶ。

「ひぃっ…あっ、あっ、…あぁぁっ、あぁんっ、由岐弥っ、由岐弥ッ、…」

譫言のように零れる、喘ぎやオレの名が乗った艶めかしい声に気持ちを乱されながら、場所や向き、力加減が変わらないよう舌と指に神経を集中させ、偶然で曖昧な刺激を確実に再現し続けた。

「あぁぁっ、由岐弥ッ…!」

すると、春緋の欲液が堰を切ったように溢れ出し、一瞬だけ彼女の全身に力が入ると、くたりと脱力した。

「はぁっ、…っぁ、」

最初の無反応が嘘のように蕩け切った核心部から顔を離し、春緋の顔を見た。

すると、彼女は頬を酷く頬を紅潮させたまま、オレから視線を反らした。

それらが高みに昇って羞恥を感じた故の仕草だと思うと、辛うじて残っていた自制心が音を立てて崩れた。

待ち焦がれた瞬間

「今度は、オレもイカせて」

精を限界まで蓄えた肉の塊を取り出し、スラックスのポケットに忍ばせた避妊具を素早く装着し、トロトロの淫処に宛がった。

「あぁんっ、待って、まだっ、」

「まだ、オレを、待たせるわけ?」

ゴム越しでも解る程の熱や滑りに任せて、宛がった先端を一気に奥へ進めた。

「あぁぁっ!」

蜜口以上の体温や潤い、締め付けやうねりがオレの侵入を受け入れると、彼女の動きに合わせて中が不規則にうねって、不意に強くオレに絡んできた。

しかし、それ以上に熱さとヌルつきが勝っていて、根元まで埋め込むのは容易だった。

春緋の半身をフローリングに寝かせ、両手を着いた。

「あぁっ…あぁっ、由岐弥ダメっ、もっとゆっくりっ…」

体勢が安定したのを良い事に、容赦ない抽挿運動を繰り返し、最奥まで沈ませた欲塊を肉壁に勢い良く擦り付ければ、濡れそぼった肉が強くオレを締め上げる。

「ッ…こっちは、待てないって、言ってる」

「あっ、あっ、ダメッ、またっ…」

一度悦びの絶頂を味わった肌や肉の神経は鋭く、オレが生み出す摩擦を感じ取って貪り、再び昇り詰めようとする。

「オレは、散々待った…もう待ってなんてやらないっ、」

オレも欲求の絶頂を目指し、余力を出し切って更なる刺激を与えた。

すると今日、いや、今までの彼女との行為で1番の収縮がオレの欲情を激しく煽った。

そんな感じで、先走り1滴までも吸い尽くす勢いで密着されれば、待ち望んだ瞬間は目前。

理性以上の本能を悟った時だった。

「由岐弥っ、」

切羽詰まった声で名前を呼ばれると、伸びてきた細い腕を首に回されて、抱き寄せられた。

「今日は何時間も、ありがとうっ…嬉し、かったっ、」

速くて乱れた鼓動、柔らかい肌、強くなる春緋の香り、そして…

「出会った時も、これから先も、…ずっと、好きっ」

懸命に紡がれた純粋な言葉の数々。

「反則っ、しょ…このタイミングで、それは」

心身共に満たされるのを感じると、待ち焦がれていた瞬間がやってきた。律動的な運動を止めて、避妊具の中に欲をぶちまける。

終わった待ち合わせ

「はぁっ…っ、はっ、」

精液も気力も体力も全てを出し尽くしたオレは、息を整えながら脱力し、横向きに寝転がった。

少しして興奮が鎮まると、すぐ隣に春緋の顔があった。浅い呼吸のせいで開放状態の唇、力なく垂れ下がる濡れた双眸。

いつもはセックスが終わって、出す物を出せればそれで満足だったのに、今日は違った。

行為やその絶頂の余韻を濃く残す、その無防備な春緋の姿が愛しく、ずっと側に居たい、独占したい、そんな欲求で満たされた。

「春緋…今まで待たせて、ゴメン」

春緋との関係に惰性や義務しかなかったオレの気持ちに、終止符が打たれた瞬間だった。