もしも許されるのなら…4
運命の男性と出会って、法的にも永遠の愛を誓って、愛し合った証を残して、一生を添い遂げる。
ーこんな、何の生産性もない関係は終わらせないと
妻となり母となり、責任の伴う立場になった今、私の脳裏を支配するのは、復縁の喜び以上に、本来の女性が味わう幸福を由衣華から奪ってしまった責任や罪悪だった。
残酷な現実
何年かぶりの再会を果たし、熱情や愛情を確め合い、このまま関係が続くと思っていた2人。
しかし、その確信は、静香の放った言葉により、壊れる日が突然に訪れた。
「金輪際、私の前に現れないで」
淳も子供も留守中の静香の寝室で、彼女のそのその言葉だけが大きく響く。
長い時間を共にした中で初めて聞く、平静ながらも威圧感のある強い口調に、由衣華の顔から笑みが消えていく。
(静香は何を言ってるの…?)
言葉の意味を理解できない由衣華は、脳内で何度もそう繰り返しながら、静香の顔を見詰めた。
向けられる視線に感情はないが、静香の決心を鈍らせるには充分だった。
視線をかち合わせたまま、沈黙が2人の間を抜ける。
「…急にどうして?」
何れくらいかの沈黙の後、それを先に破ったのは由衣華だった。
その問い掛けに、静香は平常心を崩さないよう淡々と答えた。
「負担なの、由衣華との関係が」
畳み掛けるような答えに、辛うじてあった血色が完全に退き、由衣華の頬が白くなった。
「お互い、夫も子供も居て、家庭を預かってるんだよ」
「でも、今日まで何もなく、こうやって会って関係を続けてきた。お互い好きなのに、別れる必要なんて、ないじゃん」
「由衣華。私たちもう大人で、守らないといけない物も沢山あるんだよ。それ全部守らないと、これ以上家族を裏切ったらダメだよ」
そう諭す声色は、別れを告げた時の鋭さから、親が子供に言い聞かすような落ち着きや優しさに変わっていた。
声調のそんな変化は、言葉に説得力を与え、由衣華に”別れ”という現実を濃く植え付けた。
“別れたくない、ずっとこのまま一緒に居たい”
突き付けられた現状を、やっと理解した由衣華の口から、もうそんな言葉が放たれる事はなかった。
「…わかったよ、終わりにする。でも、1つだけ、お願い聞いて」
「どんなお願い?」
再び鋭さと平静さを帯びた声に、目頭を熱くしながら、由衣華は詰まりそうになりながらも、言葉を紡いだ。
「私と、セックスして。これで、最後にするから」
語尾を言い切ったと同時に、由衣華の瞳に溜まっていた滴が頬を伝い、とうとう零れ落ちる。
最後の夢
「…1回だけだよ」
無感情に最後の懇願を受け取ると、静香は由衣華の体を乱雑にベッドへ押し倒し、そのまま股がって、白いブラウスの分け目を左右に引っ張った。
「いやぁぁっ!」
悲鳴と共に、ボタンが千切れて開いた分け目から、膨らみを覆うネイビーのブラジャーが現れる。
静香は、布ごと左右の柔らかな球体を鷲掴みにして掌に収めると、そのままグニャグニャと形を歪めたり、円を描くように転がして回す。
「し、静香っ…ちょっとっ、強くないっ…?」
「嫌なら止める?」
苦痛で眉間に薄く皺を作る由衣華に、静香はピシャリと言い放つと、カップの隙間を縫って柔らかな肌に直接触れた。
「…」
“止める”の言葉に何も言い返せない由衣華は、ズキズキとした痛みを我慢したまま、静香の愛撫を受け止めた。
しかし、彼女が受け止める愛撫はそれだけではなかった。
「いっ…」
周囲の柔らかな肉の鮮烈過ぎる愛撫に煽られ、既に硬さを持った膨らみの先端を気紛れに摘ままれれば、チクリとした痛みも由衣華を襲う。
(こんなの、強姦と大差ない…)
ーもっと痛がってよ、もう止めてって泣いて叫んでよ
眉間に力を込めて心中でそう願いながら、唇をキュッと硬く結ぶと、静香はカップの中から手を出した。
ブラジャーで隠し切れてない肌に、赤みを帯びた指の跡がくっきりと浮かび上がっていて、込めた力の強さを物語っていた。
痛々しい胸元を前に、ズキリと心を痛めたが、静香は唇をキュッと硬く結ぶと、自由になった手を、由衣華の下半身を覆うミドル丈のスカートの中へ忍び込ませた。
そして、幾度となく擦り合わせた秘所を、パンティ越しに指先で突き上げた。
「…うっ、」
いつもと違う静香の言動に対する、困惑や傷心といった雑念のせいで情欲を満たし切れてないからか、触れられたそこはまだ乾燥していて、由衣華に痛みしか与えなかった。
痛みを堪える低い呻きを耳にしながらも、静香は指先を窪みに埋めたまま、少し強めの力で反応の催促を繰り返した。
「いっ…いあっ、」
熱と潤いの供給を不躾に促される度、短くて小さいながらも苦痛に満ちた声が零れるが、依然として静香への拒絶は溢されなかった。
ー心身共に由衣華の望みを叶えて満足させたい、由衣華に嫌われて関係を終わらせたい
この先も由衣華と時間を共にしたい気持ちと、拒まれ楽になりたい気持ちが、静香の中で複雑に絡み合って交錯する。
それらが解せず、八つ当たりでもするように、サテン生地の障害を超え、窪みに2本の指先を捩じ込んだ。
「…いっ、」
苦痛が濃く滲んだ呻きが、静香の鼓膜を振動させる。
(そう、それでいいの、)
無意識の声色から、痛みの強さと鮮烈さが増しているのを読み取ると、静香の気持ちが幾分か落ち着いた。
そんな自身を最低だと思いながらも、静香は更に由衣華の奥へと進む。
「っ…ぁっ、はっ、」
狭い陰路を、滑りが足りないまま拡げられ、呼吸器官が上手く働かず、短い呼気を不規則に吐いた。
静香の体の一部が侵食している部分から、効き目の遅い毒のように、ゆっくりと全身の肌温度が上昇していく。
しかし、蕩けるような甘さを帯びた熱による高まりではなく、チクっともピリっとも感じる瞬間的な火傷のような高まりだった。
だが、性的な快楽でなくとも体温上昇に変わりはなく、由衣華の内外部が反応を見せ始めた。
「…濡れてきた」
半分まで埋まった皮膚で、内部の体温が上がっていく様子や湿りを帯びていく様子を感じ取ると、静香はポツリとそう口にした。
口角を上げ、揶揄して羞恥を煽るような声調だ。
「由衣華って、痛くされるのが好きだったんだ…今まで気付かなくてゴメンね」
声のトーンを変えないまま、静香は半端に埋めた指を上下に動かした。
「ひっ…あっ…っ、」
爪先や関節の凹凸が擦れ、内壁で感じ取った痛覚に、由衣華は無意識に腹筋に力を込めながら喘ぐ。
しかし、多少の熱と湿りを帯びて、筋肉に柔軟性が出てきたからか、唇から漏れる声の苦痛さは、幾分か和らいでいた。
そんな由衣華の様子を見て、静香は3本目の指も挿入し、他の2本と同じように動かした。
再び入り口を拡げられ、陰肉が3本の指にキツく絡み付いたが、それは一瞬の仕草で、今度はすぐ僅かに増幅した質量に馴染んだ。
何れくらいか、律動的な動きを繰り返し、静香の指を全て咥え込む頃には、由衣華の肉は柔らかく解れ切っていた。
最奥へ続く肉壁をしっとり濡らす蜜が、トロリトロリと滴り、埋め込まれた指だけでなく秘口をも濡らす。
「静香っ…はぁっ、あぁんっ」
眉間の皺を消失させ、瞳を潤ませながら、艶めかしくも縋るような声で愛しい彼女の名前を口にする。
「っ、」
そんな由衣華とは対照的に、静香は眉間に皺を作って表情筋を硬くした。
切に求められ嬉しいはずの言動も、今の彼女には苦しみでしかなかった。
心臓を針で刺されたようなチクリとした痛みを感じる静香に、由衣華は追い討ちをかけるような言葉を口にした。
「やっぱり、嫌だよっ…これで、最後なんてっ…んっ、」
悦びで溺死しそうになりながらも、吐露された切実な気持ちに、静香の中で何かが音を立てて崩れた。
(…そんな声で、そんな顔で、そんな言葉を言わないでっ…)
決心を揺るがされ無性に泣きたい気持ちのまま、静香は埋め込んでいた指をずるりと抜き出した。
どれくらいかぶりに空気に触れたそれは、由衣華の欲をたっぷり纏い、明かりの下でぬらぬらと光っていた。
「お願いだからっ、そんな言葉で私を困らせないでっ…!」
妖しい光を纏う3本の指に恍惚を味わう事もなく、強く鋭い口調で捲し立てるように言うと、静香はベッド下に手を伸ばすと、何か探し出した。
壊された蜜世界
ゴソゴソと手探りで感触や形を確かめ、少ししてから彼女はベッド下から手を出した。
その手には、ゴム製で肌色の、男性器が怒張した状態を象った物体が握られていた。
静香の手に握られている物を認識すると、由衣華は濡れた目を見開いた。
「静香、まさかっ…」
「これで最後って言ったでしょ…次なんて、またなんて、ないよ」
僅かに振るえた声で言うと、静香は無機質な鈴口を、トロトロの由衣華の蜜口へと当てがった。
”私たちのセックスで挿入はしない…約束ね”
10年は前の、女同士の交わりしか知らなかった無垢な少女の頃に交わした約束。
しかしそれは、勢い任せの軽薄で忘却されるような口約束ではなかった。
本当に愛する人と最奥で濃密な繋がって、女の心身は満悦になるのが一般的な考え方。
大学生、社会人、専業主婦に兼業主婦、そして母親。
順調に女性のあるべき人生を歩んだ中で、世間一般の考えが間違いでないのも理解していた。
2人が交わしたのは、一般論に受け入れらない自分たちの世界を守る為の、強固な取り決めだった。
従って、挿入を伴うセックスをするのは、守ってきた2人きりの世界を壊す事を意味する。
約束を交わした日を脳内で再生しながら、静香は当てがった物体を、ズブズブと咥え込ませていく。
「いやぁぁっ!」
奥地へ進むと同時に、艶かしくも悲痛な叫びが部屋中に響く。
「やだっ、抜いてっ、抜いてよっ…!」
とうとう溢された拒絶に、意を介さないよう静香は一度固くゆっくり瞬きし、由衣華を欲望の果てへと誘う事だけに集中した。
キツくなった締め付けに反発しながら、体温のない性器を更に奥へと侵入をさせる。
凹凸や模様など、男根の細かな象りに肉が馴染んで締め付けが緩和する頃には、腹部の異物感や満腹感にも似た息苦しさは鳴りを潜めた。
「いっ、…はっ、」
この先に待ち受ける、濃蜜な悦びを期待して由衣華の心とは反対に、肉体が甘美な熱や疼きに満たされる。
鈴口、雁首、そして陰茎の一番太い部分が、必要以上の熱で茹だる蜜路に収められた時だった。
「ひぁぁんっ!」
今日の中で一番の、甲高い嬌声が出たと同時に、由衣華の肢体が弓なりに仰け反った。
彼女が一際、悦びに忠実になった姿を目の当たりにすると、静香は先端部で同じ場所を軽く突き上げた。
「あっ、あぁぁんっ…!」
すると、由衣華は再び大袈裟な反応を見せた。
全身を満たしていた恍惚な体温が、一気に局部へと集中する。
由衣華が淫らに悶える場所を確定させると、最奥まで行き着く前に、静香は大きなその部分を集中的に刺激した。
グチュグチュと淫猥な水音を鳴らしながらも角度や強さ、リズムを変えないよう、ただただ無心に内壁を突き上げる。
「いやっ、やめてっ…」
熱に溺れそうになりながら、懸命に訴えるも静香の手は止まらない。
寧ろ、情欲の海への溺死を助長するように、律動運動を強めた。
熱烈な刺激は蜜壁の裏にも伝わり、そこにある分泌腺の反応をも過剰にさせた。
抑制力を失い、垂れ流しのような状態になって収まり切らなくなった淫蜜は、とろりとろりとゆっくり零れたり、勢力的な抽挿の衝撃により飛沫となって飛散したりと、様々な形で冷たい男性器や静香の手の甲、シーツなど様々な場所を行儀悪く濡らして汚していった。
何とも淫靡なそれらの様子は、由衣華の悦びが頂点に達する事と同時に、2人だけの濃蜜な時間の終わりがすぐ間近に迫っているのを示していた。
「いやっ、やっ…静香っ、やだっ、」
彼女自身もそれを悟っているのか、遠退きそうに意識や薄れていく理性を繋げるように、ただ無心でこの時間を終わらそうとしている、愛しい相手の名前を口にする。
しかし、この時間の永続を願う由衣華の切実な心情とは反対に、醜くも肉体はこの上ない女の悦びを欲していた。
「あっ、あっ、あっ…静香っ、ダメっ…イクっ、イっちゃうっ…!」
唇から漏れる艶声の間隔が短くなると同時に、充分過ぎる位に潤う蜜路が、出る事のない遺伝子の液体を絞り取るように、うねって男根にキツく絡んで締め付ける。
肉欲の奴隷と化していく由衣華の姿を見た静香は、スパートをかけるように突き上げの速度と強度を上げた。
「あっ、ああっ、やだっ、イきたいくないっ…イきたくないっ…!」
しかし、由衣華のそんな願いは虚しく、彼女の肉体は遂にその時を迎えた。
静香に手を伸ばしたまま、与えられる刺激や堪えきれない気持ち悦さで、小さく揺さぶっていた肢体の動きを停止し、指先を目一杯伸ばすと、由衣華の視界や脳内に霧がかかったように一瞬全てが真っ白になった。
ほんの数十秒後、閉じていた瞼をゆっくり開けると、体中から力が抜けて、宙を彷徨っていた四肢がくたりとベッドに預けられた。
「はぁっ、はぁっ、」
由衣華の乱れた浅い呼吸が、部屋中の空気を伝って、静香の鼓膜を大きく振動させる。
風呂上りの、汗ばむようなジットリした熱さが由衣華の体中に纏わり付く。
「いぁっ、」
筋肉が弛緩した隙に埋め込んでいた異物を抜くと、絶頂の余韻で中が敏感になっているせいか、由衣華の全身に甘い痺れのような感覚が駆け巡り、本人の意思に反してベッドに預けた四肢を跳ねさせた。
蜜夢の終わり
「約束は守った。だから、もう帰って。そして、もう私の前に現れないで」
静香は余韻を味わう間もなく、欲液で汚れた挿入物を手から放って床に置き、服を肌蹴させたまま、ぐったりする由衣華の体を無理に起こすと、言い放ちながら彼女を部屋から追い出した。
そして、バタンと勢いよくドアを閉めて、由衣華の姿を視界から消した。
「…サヨナラ」
落ち着いた声音でドアの先の静香に言うと、由衣華はこの場を後にした。
足音が徐々に遠くなり、やがて玄関の扉がバタンと音を立てる。
静寂が支配する空間で、静香はポツリと溢した。
「…ゴメンね、由衣華」
ー 貴女を好きになって、未来のない関係を続けて貴女を縛り付けて、最後の最後も酷くして
由衣華への罪悪で胸が一杯になると、静香は独り涙を流した。
もう会う事のない彼女に許しを貰うように、時間の感覚が麻痺してもずっとずっと…。
もしも許されるのなら1 / 2 / 3 / 4
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